
演出
佐伯陽太郎役
:シライケイタ

--『痕、婚、』の脚本を初めて読んだときの感想や印象的だったシーンを教えてください。
作者の苦労が伝わってきました。扱う題材と描き方のバランスに、原田自身が超絶苦しんでいる感じがしました。ラストシーンが印象的でした。

--この作品を演出するうえで大切にしていることを教えてください。
原田という作家がこれを書いた思い。
人間の複雑さ、例えば、優しさと残酷さが同居できるのは何故なのか、見えないところにある真実、言葉で説明しきれないもの、贖罪の気持ちでどこまで許されるべきなのか。
こういった、分からないことを考え続けること、そんなことを大切にしたいと思っています。

--本公演では出演もされますが、ご自身が演じる役はどんな人物か教えてください。
大きな矛盾を抱えた人物。大きな愛情と残酷さが同居している。いちばん素直な人だとも言えるかもしれません。


--稽古はどうでしたか?稽古や共演者とのやりとりで印象に残っていることがあれば教えてください。
優しい人たちの集まりです。みんな演劇に誠実で、他者に誠実な人達です。素敵な仲間たちとの時間が、僕にとって最高に幸せな時間です。
台本に何が書かれているのかを話し合う時間、そして当時を生きた人たちの思いにみんなで思いを馳せる時間が特に印象的です。

--劇団温泉ドラゴンでは日韓三部作の上演など、日韓関係を取り扱った作品がありますが、今回の作品を創作するうえで重要だと感じていることはなんですか。
過去に対する真摯な眼差し、それに尽きます。そして、作者である原田に対する敬意。
分からないものを分かろうとする行為、つまり他者の目を持とうと努力する行為は、過去に対しても現在に対しても共通のものだと思っています。

--最後に公演を心待ちにしている皆さんにメッセージをお願いします。
我々のこれまでの活動の延長線上に、この作品はあります。
我々の蓄積を観に来ていただけたら嬉しいです。
最高に素敵な客演陣とスタッフと一緒に、真摯にお届けいたします。
劇場でお待ちしています。


シライケイタ
劇団温泉ドラゴン代表。98年に蜷川幸雄演出「ロミオとジュリエット」で俳優デビュー。11年より劇作と演出を開始。社会的なテーマのオリジナル作品から、映画や小説の舞台化まで幅広い創作活動を行う。15年、韓国密陽演劇祭で戯曲賞。18年、第25回読売演劇大賞杉村春子賞。日本演出者協会理事長。日韓演劇交流センター会長。座・高円寺芸術監督